沖縄面白本棚

日々の活字チュウ毒生活の本から これは面白い本!を紹介します。 このブログで紹介するジャンルは、ノンフィクションを中心にあまり有名ではないが、読むと面白い本です。もちろん沖縄本も紹介しますね。

2015年05月

本日は、良い天気に恵まれて、最高の一箱古本市になった。

古本仲間も5組ほど出店していたので、ゆっくり、ゆんたく(おしゃべり)して
下記7冊ゲットしたサー。
さて、はたして、全部読めるのだろうか?
まあ自信が無いけど古本買うのは楽しいねえ。

①京都魔界巡礼(丘 眞奈美)
②壇(沢木耕太郎)
③活字狂想曲(倉阪鬼一郎)
④現代職人伝(大谷晃一)
⑤わたしの舞台は舞台裏(木丸みさき)
⑥沖縄の島を自転車でとことん走ってみたサー(カベルナリア吉田)
⑦沖縄の島へ全部行ってみたサー(カベルナリア吉田)

本書は、アホウドリに一攫千金の夢を見た日本人の物語である。

国家が栄える背景には、自然を破壊する行為、略奪する行為があるという事を
世界の歴史を見るとよくわかる。

世界に目を向けると、イギリスでこういう行為が行われていた。
16世紀から17世紀にかけて、イギリスでは海賊行為という手法で豊かさを追求し、
200年以上にわたる歳月をかけて大英帝国を築いた。
たしかに大英帝国は産業革命によって確立されたが、その元手となる資金の一部は
紛れもなく海賊がもたらした略奪品、つまり「海賊マネー」である。

一方、日本はどうだろうか。
16世紀の同時代は戦国時代である。
本能寺の変で織田信長が倒れ、豊臣秀吉が天下統一を果たした時期である。

本書はさらに3世紀も過ぎた、明治の時代の話であるが、イギリスの海賊と共通する点がある。
それは、無人島という島でアホウドリという何も抵抗もできない鳥類を一攫千金を夢見て
山師的な人々が自分の欲望の赴くままに奪っていく行為が、まさしく明治の時代の海賊である。
その点を始めにお伝えして、本書の面白いところを紹介しよう。

本書の主人公である、玉置半右衛門はwikipediaによると、八丈島出身で、19歳のころ、
横浜で大工として働き、その時に羽毛布団と出会い、アホウドリが布団に使われていることを知る。
その当時から開拓者としての素質があった。

現在は、アホウドリは絶滅危惧種に指定されているが、明治以前は、驚くべきことに、
小笠原諸島、鳥島、尖閣諸島、大東島諸島に数千万羽が生息していたという。
アホウドリの羽毛は横浜商人に売られ、肉は自給用として食用になり、糞は良質の肥料になるという
無駄なところがない鳥類であったし、捕獲が用意なため、誰でも簡単に採取できる。
そこの目を付けたのが、玉置半右衛門である。

さて、実際の数字を挙げると、
撲滅したアホウドリの数は明治20年の鳥島上陸から半年間で、10万羽。
明治35年の鳥島大噴火で全滅するまでに捕獲した数は600万羽。
すごい数である。現在のお金に換算すると、年収10億円になる。
アホウドリ豪邸が建つほど、財を残した。

その細かい手法は本書を読んでほしいが、
その財産を活かして、玉置はさらに、小笠原諸島近海の無人島にも進出したが、
他の山師も集まってくる。

しかし、当時日本では海図を作る技術はなく、ヨーロッパ製の疑わしい地図が出回っていた。
なぜ、疑わしいかというと、当時の小笠原諸島周辺は、無人島が多数あり、
ヨーロッパ、及び米国も進出している状況で、海図にとりあえず、確認していないが、
島があることにして書いてしまえという風潮があり、存在しない島「疑存島」が多数あった。
その島が万が一あったら、自分の国が確認していたと主張できるからである。

その疑存島に振り回されて、多くの山師的日本人が無駄な航海を繰り返した。

玉置はさらに南に目を向けた。
それが、南大東島である。
しかし、そこは更に過酷な環境の島で、断崖絶壁の島で、簡単に上陸ができないのである。
それでも諦めずに登っていき、上陸する。

念願かなってアホウドリを捕獲しようと思ったら、思ったより数が少なく、
大きな財が見込めないが、その島にはサトウキビ栽培という農業開拓が可能であった。
玉置はこの島に八丈島からの移住者を迎え、砂糖生産の島に変貌させたのである。
これによって、玉置は「南洋開拓の先駆者」として地位を不動のものとしたである。

本書はさらに興味深い話が満載の面白本である。


アホウドリを追った日本人(平岡昭利)




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