本書は2016年5月にNHKスペシャル『天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る』
の番組作りの為の取材から生まれた、羽生善治名人の分かり易い言葉でのレポートと
担当ディレクター中井氏の解説で、人工知能の今後に迫っている。

本書で気になる2点を紹介。

一つ目は、セカンドオピニオンとしての人口知能。
この考えには納得する。
医療の世界では担当医師の判断だけではなく、他の医師の意見も
聞いて患者がその手術なり治療なりを理解して臨むのがいい。
その場面でビッグデータを持った人工知能が過去の手術例とか
最も最善の方法を導きだすのは、得意分野かもしれない。

もちろん、その為の法整備も必要だろうし、機械より人間が感情的な
面では安心するというデメリットもあるが。

二つ目は、将棋の世界では人工知能が人間を超えるかという疑問。
人間は一つの局面で平均80通りの指し手があるという。
棋士が対局中に局面を読む流れとして、「直観」、「読み」、「大局観」と
なる。
その中で経験が一番左右するのは、大局観。

一方、人工知能は、100万局、3000万手のビッグデータを
屈指して攻めてくるので、その量とスピードでは負けます。
そんな中でいかに勝つかが課題ですが、果たして今後はどうなるのか。


最後に、人工知能のロボット社会がきて、社会に導入されていくときに、
そのデータで問題ないのか、人間に危害を加えないのかが心配になってくる。
その検証するにあたって、人工知能が得意とするところ、苦手とするところを
把握する必要がある

そういう時に、将棋ソフトと棋士の対局は未来の人工知能社会の
模擬実験的になっているのではないかと、羽生氏は唱える。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
二〇一六年三月、人工知能の囲碁プログラム「アルファ碁」が世界ランクの棋士を破った。羽生善治は、その勝利の要因を、「人工知能が、人間と同じ“引き算”の思考を始めた」とする。もはや人間は人工知能に勝てないのか。しかし、そもそも勝たなくてはいけないのかー。天才棋士が人工知能と真正面から向き合い、その核心に迫る、“人工知能本”の決定版。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 人工知能が人間に追いついたー「引き算」の思考(アルファ碁の衝撃/デミス・ハサビスとの対話 ほか)/第2章 人間にあって、人工知能にないものー「美意識」(ロボットは、見知らぬ家でコーヒーを淹れられるか/棋士は何手先まで読めるのか ほか)/第3章 人に寄り添う人工知能ー感情、倫理、創造性(人工知能は「接待」できるのか/孫正義が掲げるヴィジョン ほか)/第4章 「なんでもできる」人工知能は作れるかー汎用性と言語(人工知能は三つに分かれる/「フレーム問題」を考える ほか)/第5章 人工知能といかにつき合えばいいのか(二〇〇七年の発言/一〇〇億の人間と一〇〇億のロボットが共存する社会 ほか)

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
羽生善治(ハブヨシハル)
1970年生まれ。将棋棋士。1985年に史上3人目の中学生棋士となる。1996年には竜王、名人ほか7つのタイトルすべてを獲得し、話題を集めた。2008年には、永世名人(十九世名人)の資格を獲得し、王位・王座・棋聖のタイトルを保持(2017年2月現在)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)